8月末から、カリフォルニアにウォータポロ留学しているエンゾ。14歳になった。
「ママ、真剣な話がある・・・」
と、電話で言ってきた。
エンゾの情熱を追求できる場所へ送ることで、人生最初の転機になり、エンゾにとって最善の利益になり、私も応援に励む熱い時間になると期待していた。
けれど実際にはエンゾが様々な機会に恵まれる一方で、私はエンゾの受け入れ先にかなり振り回され、精神的に苦痛な時間が続いていた。
学費が高額なので、1学期(4ヶ月間)のみ送るという約束だったので、あと2ヶ月間耐えよう、今期が終わったらすぐにハワイへ戻そうと決めた直後の電話だった。
「今朝トニー(アカデミーのオーナー・ヘッドコーチ)に呼ばれて、今年いっぱい面倒見たいと言われた。」
トニー・アゼベドはオリンピックに5回出場し、アメリカ水球史上最高峰といわれる選手で、現在は若手育成に力を注いでいる。エンゾは彼の経営するアカデミーに通いながら、クラブチームにも所属している。
アカデミーの月謝は3,200ドル(約50万円)、クラブは500ドル(約8万円)。
ただありがたいことに、トニーが救いの手を差し伸べてくれ、クラブの月謝を免除してくれていた。
それにしても、ひとりで2人の子供を支える経済力では、非常に負担になる額。
「クラブチームの分だけでなく、アカデミーも全額免除してくれるという。」
こんなすごい話、聞いたことがない・・・
ここ数年、今まで以上の苦難に面している私。なぜ私が全力や誠意を尽くした人や会社からは、仇になって返ってくるんだろう・・・と日々考えていた。でもこの瞬間、
『そうか。私が尽くした分は、エンゾに返ってくるのか!』
と悟った瞬間だった。そしてまだまだ続く。
「8年生(中学校)が終わったら、彼の通っていたウォーターポロ名門の公立高校へ行って、そこから大学へのリクルーティングを手伝ってくるという」
もうウォータポロ界では凄すぎて、ありえない機会・・・
「だから僕は、このままここに残っていいかな?」
つい最近までは、ホームシックになってきた、ハワイの海や友達が恋しいなど、言ってたいことろ。
そして最近はサーフィンにハマり、これからはカヌーパドリングも始め、ハワイらしいティーンを過ごしてもらうと、私も思っていたところ。それを言うと・・・
「こっちにはもっといろんな機会があるし、トニーが僕のことを信じてくれているから、ハワイの生活を諦めてでも、僕は挑戦してみたい。」
こんな素晴らしい機会や、エンゾの思いを聞いたら、心から嬉しくなると思ったけれど、
私のお腹はドーンと重くなった・・・
もうエンゾはハワイに戻ってこないんだと、気付いたから・・・
未婚で産んでから、どんな時もずっとふたりで、二人三脚できた。
留学という休憩期間を与えて、また戻ってふたりで歩んで行けると思ってたけど、これからはひとりで歩んでいくんだ・・・
その時に、以前言われた言葉を思い出した。
「Once you send a kid to the mainland, there is no way back.」
(子供を一度アメリカ本土へ送ったら、もう返って来ないよ。)」
そしてエンゾが言った。
「今月末のラスベガスのトーナメントに来て、僕のパフォーマンスを見て欲しい。そこでトニーと会って、話して欲しい。」
トーナメントまであと2週間。
ラスベガス、行ってみるか・・・
